○ その第1は、「小泉流ショートフレーズ」というテクニック。
反共タカ派のレーガンは「強いアメリカ」を標榜して軍拡を実施しました。
彼はソ連を「悪の帝国」と非難し、ソ連のミサイルに対抗して西ヨーロッパ
にアメリカ製中距離核ミサイルを配備しただけにとどまらず、静止衛星を
活用して宇宙空間でソ連のミサイルを打ち落とすシステムを開発するという
戦略防衛構想(SDI)に着手しました。
このSDIはスケールが大きすぎた感は否めず、多少の皮肉を含めて
「スターウォーズ計画」とも呼ばれました。
この計画は完成しなかったのですが、レーガンのSDI宣言はすでに軍拡
競争を続けるには体力を弱めていたソ連に対し、結果として大きな圧力と
なったようです。
SDIが実現すれば、核戦略においてアメリカの一方的な優位が成立するた
め、ソ連のゴルバチョフ書記長はアメリカが核戦争を計画している兆候だと
考えて1985年のジュネーヴ会談、1986年のレイキャヴィク会談での
軍縮交渉によりSDIを阻止することを試みましたが失敗に終わり、ついに
ソ連は軍拡競争をあきらめ、1987年の中距離核戦力全廃条約の締結へと
つながって、最終的に冷戦終結をもたらしたのです。
長い目で見たレーガン政策の軍拡の流れはこうなのですが、レーガン政権時
点について見ると、レーガン就任前の1980年の国防予算1300万ドル
に対し、わずか5年後には2500万ドルと2倍近くまでレーガンは毎年毎
年国防費を急増させたのです。
このように所得税を減税する一方で軍備に大金を放出していては、景気が
回復するはずはありません。
そこで、レーガンが国民に対して行った説明は
「アメリカの今の軍備拡張が共産主義者に脅威を与え、その結果ソ連が軍拡
に走りソ連経済が疲弊する。そうなればソ連国家自体が弱体化して世界平和
が訪れる。また当然アメリカの軍事予算も大幅に縮小される。
つまり、そのときは『平和の配当』をアメリカ国民が享受できるのだ。
だから今しばらく、国民は痛みに耐えてほしい」
というものです。
▽ この話の最後の部分、どこかで聞いたような気がしませんか・・・?
そうなのです。
小泉構造改革の「痛みに耐えよ!」という小泉元総理の演説と同じロジック
を、20年も前にレーガンが使っていたのです。
ロジックの隠しテーマは、「成果の先送り」です。
レーガンの場合、軍事費に大金を投じたものの、スターウォーズ計画は挫折
しました。
それでも、ソ連崩壊は実現し冷戦は終結したので、外見上、レーガン演説が
正しかったようにも見えますが、実際はその前にソ連は疲弊しきっていたの
ですから、レーガンは演説とスターウォーズ計画のジェスチュアだけやって
おけば、お金を掛けずにソ連崩壊を待つことも出来たかもしれません。
(1964年から1982年までつづいたブレジネフ政権時代、ソ連経済は
政治的・社会的な構造問題から疲弊していました。経済・社会組織の改革が
必要でゴルバチョフのペレストロイカに結びつくのです)
反面、米ソの軍拡競争がソ連の崩壊を早めたのも確かでしょう。
▽ いずれにしても、政策のようなさまざまの社会条件の影響を受ける事柄
は、最終結果が出るまでにはかぞえ切れぬほどの条件や途中経過があり、
結局の所、因果関係は正確には分からなくなります。
つまり「成果の先送り」ロジックを使えば約束した結果はいずれうやむやに
できるので、言っている本人にもそれが実現しないと分かっているような
政策を強行したいときに、何とでも都合のよい理屈をつけてこれを使えば
何でもやれます。
。。。。。。。。。。。。。
ということで、小泉元総理は「痛みに耐えよ!」という「成果の先送りロジ
ック」を活用したワケですね。
この小泉ロジックが、約束どおり国民に「痛みに耐えた報酬」を享受する
結果をもたらすものかどうか?
レーガノミックスの結果は超・格差社会でした。
レーガノミックス政策を、その内容のみならず、ポピュリズムの手法、国民
へのアピール・テクニックまでそっくり真似した小泉構造改革の結果は、
当然 ”レーガノミックスと同じ”です。
▽ なお、小泉元総理本人は、そっくり真似したとは思っていないでしょう
が、真似するつもりはなくても、
第1に、アメリカ政府の「年次計画要望書」に沿って行動し、
第2にレーガノミックスをお手本にして
第3にレーガンが成功したポピュリズムの手法を使う
というように、3つものアメリカ方式を踏襲して新自由主義経済政策を成功
させようとすれば、誰がやっても似たような手段を取ることになり、結果も
当然同じになるということでしょう。
「年次計画要望書」について知りたい方は
こちらをクリック!
▽ さらに、彼が真似する意図がなかったのに、結果としてポピュリズムの手法
やその他のテクニックの細部に至るまでレーガン技術と同じになってしまっ
たということであれば、さらに上記結果になる可能性は高まります。
つまり、小泉流新自由主義政策はレーガノミックスと同じ結果に至る或る種
の自律性、法則性があるということであり、小泉改革の延長線上にあって、
これから進行するであろう日本の超・格差社会という結果もまた、その自律
的法則性によってより確実に、アメリカと同じ形で現実化する可能性が高い
ということになりますから・・・。