前回は主に合同会社の特徴をお話しして、新会社法の「自由度」の高さを
見ました。
それが、新会社法の大きな特徴であり、
別の言い方をすると、その ”ズボラぶり!” が魅力です。
合同会社。これは新会社法のなかでもいちばん規制がゆるい。
規制がないと、実際どうすればいいのか逆に困りますね。
実際上どう扱えば、よいのでしょう・・・?
○1 合同会社は個人起業向き。失敗しようがない新制度!?
新会社法の改正内容は、かなりの大変更です。
同法や、税法、会計法を始めとする関係法令の大改正の内容をよく見ると
大増税政策も見え見えながら、「とてつもない」規制緩和法令なのです。
ここで、「とてつもない」と言う意味は、立法府も行政も今回の法令改正
の結果を相当程度予測できてないのに、規制緩和してしまった法令なので
はないか?
という意味です。
さらに新会社法の中でも合同会社については、具体的イメージが決まって
ないのに出来てしまったような法人形態なのです・・・。
その証拠に、会社法が国会で採決されるに当たって合同会社については次
のような附帯決議が行われています。
(附帯決議とは政府が法の施行に際して格段の配慮をすべき事項です。
但し、法的拘束力はありません。)
↓ ↓ ↓ 付帯決議。ここから
「13 合同会社制度については、今後の利用状況を観察し、株式会社の
計算等にかかる規制を逃れるために株式会社から合同会社への組織変更等
が顕在化した場合には、必要に応じ、その計算に関する制度の在り方に
ついて、見直しを検討すること。
14 合同会社に対する課税については、会社の利用状況、運用実態等を
踏まえ、必要があれば、対応措置を検討すること。」
↑ ↑ ↑ 付帯決議。ここまで
13の「株式会社の計算等にかかる規制を逃れるために」というのは、
資本金も大きな株式会社が税金逃れのために不当に合同会社制度を利用
するような場合を想定しているもので、私たちの考えているような個人
会社に対する規制ではありません。
14については、アメリカ版合同会社LLCで認められている構成員課税
(法人課税をしないで社員個人単位の課税のみ)を日本版合同会社では
認めなかったことについて、将来これを認める方向で検討することを目的
とする付帯決議だという解説もあります。
構成員課税というのは、会社に対する法人税を非課税として、社員の所得
税のみ課税するという、これまたとてつもなく良い法律ですが、今回の
新会社法では見送られました。
上の付帯決議は、将来これを採用する可能性を残したもので貴重です。
▽ ですから、新会社法施行後、実際に合同会社が設立され、その運用実態
を経過観察したあとで、合同会社の計算制度や課税制度が改正される
可能性があります。
合同会社については運用実態がほとんど予測できないので、このような
付帯決議のついた法律になったのでしょう。
★ ということを逆に見れば、合同会社は相当自由に会社組織を創れると
いうことで、この法律は深い可能性を秘めているでしょう?!!
○2 走ってみてから、ダメ直しする! 新会社法
考えの基本は、試行錯誤主義
やりたいようにやりましょう!
従来の規制を緩くして、会社設立をやりやすくする。
事後監視とは、結果については自己責任ということか?
早くやる者がトク。もし規制が強まればそのとき対応すればよい。
▽▽▽
そう考えていたら、面白い記事を発見しました。
「 沖縄タイムス 06年5月1日 社説 」を一部引用します。
↓ ↓ ↓
(前略)
研究者らは、新法の内容面の特色として、「事前予防型の規制から事後
責任型の規制へ」「事前規制型社会から事後監視・救済型社会へ」の転換
を挙げている。
事前規制をできるだけ廃止して、事後チェック、事後の規制で対処しよう
という考え方だろう。
(中略)
衆参法務委員会の付帯決議では新法施行に伴う懸念も表明され、幅広い
事項の実施について配慮を求めている。
今回の法典化で会社をめぐる法改正が一段落したとの見方が一般的だが、
新法には「今後検討すべき多くの問題点、課題がある」との指摘もある。
国会審議で、実務家らは「債権者保護との関係で最低資本金制度は有用」
「株式譲渡制限会社で取締役の任期を最長十年とするのは長過ぎ」
「株主代表訴訟の形骸化が進む」など、さまざまな角度から課題を指摘
している。」
(後略)
↑ ↑ ↑
以上、沖縄タイムス社説。
○ この記事を読んで、私は、新会社法の本質をついているなぁ、と感じ
ました。
つまり、
(1)新会社法は、会社をつくった結果発生する問題を予防するための
法律ではありません。
国民が会社をつくりやすくするための法律であり、つくった会社を事後
監視、事後チェックして規制することにします。
(2)ですから、会社をつくることについては、多くのの制限を撤廃し
ました。
その結果、「今後検討すべき多くの問題点、課題」は、当然いろいろ
あります。
はっきり言って、法律をつくった方も、どうなるか分からないのでしょう
ね。
▽ 上記2項を言いかえれば、
”会社が出来て活動すれば、いろいろ問題が起きるかもしれません。
でも、とにかくやってみて問題が起きたらその都度対策を考えましょう。
そのときに、また法改正でも何でもやって対応していきましょう。 ”
ということです。
新会社法はそういう考え方にもとづいてこしらえた法律であり、中でも
合同会社にその特徴が集積されているようなのです。
▽ この趣旨を、個人会社をつくる側から利用するときには、新会社法に
定められている数少ない制限さえ守れば、(ほとんど)何をやっても
許されるということです。
ただし、ここで注意すべきことがありますね・・・。
それは、「どういう問題」が起きそうなのか、その問題の性質をあらかじ
め予測しておく必要があるということ。
個人会社を設立したものの、後々不利になるような問題が起きては困り
ますから、ここをチェックしなければなりませんね。
○3 法にもホンネと建て前が・・・。
『 日本の株式会社のほとんどは、ある面、法律どおりにやってない 』
それが分かれば怖いものなし!
ところで、日本の会社法には、昔から、いろんな面で建前と現実との
大きな違いがあるのです・・・。
たとえば、株式会社については、我が国ではその90%が同族会社であり
現実的意味が薄いからでしょうが、会社の決算公告などは、法律上規定
されているものの、ほとんどの会社で実行されていないのが現実です。
それは、第三者株主を必要としないような同族会社にとって、不特定多数
の第三者へ向けて官報や日刊紙の上で決算を公表する意味が無いから
ですね。
ところが、今回の会社法改正によって株式会社の最低資本金が撤廃された
事により、株式会社一般に対する信用度の低下が問題視されてくると、
上記決算広告の実行が強く迫られるようになるのではないか、という推測
もされています。
これが実現化すると余計な手間やお金もかかり、同族会社など小規模会社
にとって株式会社組織は面倒になるかも知れません。
▽ この点について、現実にどうなるだろうかというと、過去数十年の、
同族株式会社や実質個人経営の小規模株式会社の実体から見て、
(1)新会社法における「株式会社」は従来より現実的な規制の厳しく
なる部分も将来的にはあり得るでしょうが、当面(たとえば10年間程度
で)は小規模株式会社の存立にかかわるような変更はないのではないでし
ょうか。
その理由のひとつは、我が国の株式会社の約90%を占める同族会社が
大影響を受けるような変更は、現実に実行するのが難しい、ということが
あります。
▽ 実際に官報や日刊新聞に毎年決算公告を掲載している株式会社は、上場
企業とごくごく一部のその他の株式会社だけだといわれています。
現実問題として、株主総会が集中する6月ころの官報と日経新聞などの
日刊新聞を見ても、公告している会社の数は知れています。
これが、同族会社を含めて日本中の株式会社が公告することになったら、
官報が電話帳のように厚くなるでしょうし、日刊新聞は号外を出さないと
追いつかないでしょう。
▽ それと、公告掲載費用が、官報で約6万円、日刊紙で約10万円も毎年
毎年かかることになります。
ですから、実質個人事業とか同族会社でありながら株式会社組織をとって
いる場合は、相当な問題です。
読者の側から考えても、よほど有名な企業の公告でもないかぎり、電話帳
のように厚い官報や新聞に掲載された名も知らぬ小企業のちょこっとした
決算公告(貸借対照表だけの掲載でよい)を、だれも読まないでしょう。
このような、公告に何の意味があるのでしょうか・・・。
いちばんの意味は、官報と新聞にとっては、掲載料という莫大な増収が
見込める、ということくらいかもしれませんよね?
(従来は定款に必須の掲載事項だった公告の掲載先を、今回の新株式会社
法では、定款に記載しなくてもよい、ということに変更し、記載しない
場合は官報に掲載しなければならないということになりました。
これは官報による増収狙いかも・・、とみるのは勘ぐりすぎでしょうか、
ネ? )
★○ そこで、私たちの対策ですが・・・、
それでもなお、将来、そのような法律の変更が行われて株式会社形態が
不利になるようであれば、そのときに合同会社への組織替えをすることを
あらかじめ検討しておくとよいわけですね。
(2)これにたいして、合同会社は、従来の小規模株式会社よりずっと
規制の弱い、小規模事業に適した法人形態です。
将来にわたって不利な問題の起きにくい、むしろ問題解決に有利に働く
法人形態のようなのです・・・。
実質個人事業のままで法人税法を利用して節税するという目的からみれば
上記のとおり、将来的に株式会社組織が同族会社には不向きになったよう
なときにも合同会社に組織変更する手があるわけですから、
現在、小規模株式会社を経営している方にとっても、将来、大いに力に
なりうる会社形態だと思われます。
。。。。。。。。。。
合同会社を新設した新会社法って、そういうものなんだ・・・。
ですから、新会社法は前代未聞・新タイプの法律です。
税法と組み合わせると応用価値に富んでいる!
と言えないでしょうか?
★○ 国民の生活と生命をおびやかしかねない、止めどなき増税。
これに対抗する唯一の道具は税法研究しかない!
今や、節税が自分と家族を救う決め手ですよね。
▽ サラリーマンも個人起業したり不動産投資するには税法の知識、中でも
法人税の知識が必須です。
また、不動産投資は税法とコンビで強力な節税力を発揮します。
しかも株式投資のような短命性、不安定性は本来ありません。
以上は、既刊マガジンでお話ししたとおりです。
こちらをクリック ⇒ 「リアル投資学!」既刊・エッセンス
上記のどの組み合わせを選ぶにしても、
節税力を伸ばすために、個人事業家にとって新会社法は(たぶん)とても
よい法律なのです。
。。。。。。。。。。
○4 おまけ
合同会社、社長の肩書き「代表社員」は カッコよいか悪いか?
その対策!!
ちょっと余談ですが・・・、
合同会社の社長って、一般には、代表取締役と言いません。
代表社員、というのですね。
(なお出資者を社員といい、社員は全員業務執行権を持ちますが、一部
社員だけを定款で業務執行社員と定めることもできます)
そうすると、個人会社をつくって自分と奥さんだけで当面経営するとき、
名詞の肩書きが「代表社員 社長」では、ちょっとカッコ悪いじゃないか。
そういう、モンダイがあるかも知れません・・・。
▽ ところで、今や資本金1万円の株式会社も存在することになったのです
から、株式会社の社長の名詞に代表取締役と書いてあっても、個人商店の
店主と同じレベルかも知れないという見方をされるように、まもなくなる
でしょう。
つまり、代表取締役という言葉が新会社法以前に持っていたブランド力を
失うのは確かですから、執行社員という名称が逆に新鮮な力強さを持って
アピールする気配もある、とは感じませんか・・・?
なぜなら、最近のアメリカ型企業経営に染まった日本企業の経営者が、
03年の商法改正により、代表取締役という肩書きよりもCEO(最高
経営責任者、代表執行役)という言葉を好んで使うようになった風潮が
あります。
そこで、取締役などという束縛的で非行動的な言葉より、執行役とか執行
社員という、アクティブで有能さを感じさせるな肩書きの方が、むしろ
カッコよいのではないでしょうか。
ですから、「代表社員」という肩書きにしても、
ケレンのない謙虚さの中に深い洞察力と機敏な行動力を感じさせる、
新しいキーワードとなるかも知れないのです。
・・・・・・・・・、
それでもやっぱり、代表取締役になりたいときは・・・、
合同会社は任意で取締役会を設置できますから、あなたの奥さんを取締役
にして、自分が代表取締役に就任すれば、それでOKですね。
合同会社って、便利ですよね・・・。
アサノあきら
特報!
○ 本メルマガ記事を追認する報道を、2ヶ月後に朝日新聞が掲載。
(06年9月8日付 朝刊 経済面)
詳しくは、『リアル投資学!』06/09/20
『 「リアル投資学!」の「 経済法制ズボラ化 」を
2ヶ月遅れで朝日新聞が報道! 』