年次改革要望書

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

年次改革要望書(ねんじかいかくようぼうしょ)は、日本政府米国政府が両国の経済発展のために改善が必要と考える相手国の規制や制度の問題点についてまとめた文書で、毎年日米両政府間で交換される。「成長のための日米経済パートナーシップ」の一環としてなされる「日米規制改革および競争政策イニシアティブ」に基づきまとめられる書類であり、正式には「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく要望書」(The U.S.-Japan Regulatory Reform and Competition Policy Initiative)という。

目次

概要

最初の日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく要望書(年次改革要望書)が作成されたのは平成13年(2001年)であるが、これは先行する日本とアメリカ合衆国との間の規制緩和に関する対話に基づく双方の要望書の枠組みが現行のイニシアティブの形式に整えられたことによる。

由来をたどれば、1993年(平成5年)7月の宮澤喜一首相とビル・クリントン大統領との会談で決まったものとされている。『拒否できない日本』によれば、最初の要望書は1994年(平成6年)であった。

双方の要望書は両国政府によって公開されており、日本から米国への要望書については、外務省のウエブサイトにおいて公開されている。同様に、米国から日本への要望書については、駐日米国大使館のウェブサイトに日本語訳されたものが公開されている。 米国側からの要望が施策として実現した例としては、建築基準法の改正や法科大学院の設置の実現、独占禁止法の強化と運用の厳密化といったものが挙げられる。米国政府からの要望で実現していない項目としては、再販制度特殊指定の廃止(2006年(平成18年)には公取委員長の新聞の特殊指定見直し方針に対して新聞業界が激しい抵抗を示したが、年次改革要望書の報道はなかった)が挙げられるが、年次要望改革書では引き続き取り上げられている。一方、日本側からアメリカ側への要望が実現しなかった例は、狂牛病に関しての全頭検査の実施などである。また、米国側からの要望として上がっていたホワイトカラーエグゼンプションは、「労働時間の長時間化、サービス残業の合法化を招く」として反発の声が上がっている。こういった背景から「残業代ゼロ合法化」という指摘がなされている[1]

郵政民営化との関連

郵政民営化もこの要求項目のひとつであって、2007年(平成19年)4月と期限を切っての要求があった。そのため、郵政民営化反対派からは「郵政改革は米国からの要望書に応じるために行われており、国益に反している」と、民営化批判の1つの根拠とされた。たとえば、民営化反対派である衆議院議員小泉龍司2005年9月の総選挙で落選)は、2005年(平成17年)5月31日に開かれた郵政民営化に関する特別委員会において、要望書について「内政干渉と思われるぐらいきめ細かく、米国の要望として書かれている」と述べている。

また、竹中平蔵郵政民営化担当相は2004年(平成16年)10月19日の衆議院予算委員会で「(要望書の存在を)存じ上げております」と答弁した。その後、竹中平蔵の知人のPR会社スリートは「郵政民営化・合意形成ターゲット戦略」を提出した[2]。2005年6月7日の衆議院郵政民営化特別委員会では、国会議員の「郵政について日本政府は米国と過去1年間に何回協議をしたか」「米国の対日要求で拒否したものはあるか」という質問に対して、米国と17回協議したことを認めるも、対日要求についての具体的言及は避けた[3]。 そして、郵政法案の審議が大詰めを迎えた2005年(平成17年)8月2日の参議院郵政特別委員会で「(年次改革要望書を)見たこともありません」と一転した。竹中平蔵は、政策上の議論で植草一秀氏にまったく歯が立たなかった。[4]

医療制度との関連

年次改革要望書によって変わってしまった日本の医療制度が、どのようであるか、どのようになるかについては、映画「SICKO」に詳しく描写されている。

日本の内政との密接な関係

報道で年次改革要望書がほとんど扱われていないことについて

関岡英之城内実などの識者は、以下の点から、年次改革要望書に関する報道が広く国民に充分になされていないのが事実だとしている。

  • 建築基準法の改正提言には、アメリカ政府の介在がひとことも書かれておらず、法改正の新聞報道でもいっさい触れられていない[5]
  • 年次改革要望書の全文が日本のマスメディアで公表されたことはない[6]
  • 郵政民営化をはじめとする構造改革の真相を国民が知ることとなったら暴動が起きかねないので、マスコミ対策は用意周到になされていた。郵政民営化に反対する政治評論家森田実が、ある時点からテレビ局に出演できなくなった[7]
  • 『赤旗』・一部夕刊紙以外の主要マスコミでは『年次改革要望書』が発表された事実そのものの報道もなされない。国会議員が国会で問題にしても、なぜか全国紙やテレビ局の政治部記者からは一件の取材もない[8]

脚注

  1. ^ 輿水正『911自作自演テロとオウム事件の真相』134頁
  2. ^ 植草一秀『知られざる真実―勾留地にて―』119頁~121頁[蔑視されていた国民]
  3. ^ 『城内実の視点!(1)平成19年3月号』
  4. ^ 植草一秀『植草事件の真実』104頁~113頁
  5. ^ 関岡英之『拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる』50頁
  6. ^ 前掲『拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる』54頁
  7. ^ 『逓信・「輝」かがやき』2007年6月号「城内実の視点!(4)「改革」にだまされるな!」
  8. ^ 『財界展望』平成18年4月号「黙殺される米国の「日本改造計画」米国「年次改革要望書」の正体」

関連項目

外部リンク

日米規制緩和